2006年12月17日

Winnyの判決

Winny裁判の京都地裁の判決がでました。罰金150万円だそうで。
技術屋として今回のWinny事件には注目していましたので、自分の中でまとまってない情報を整理してみます。
ネタ元は朝日新聞の判決要旨と、壇弁護士の事務室にある弁論要旨から。


■公訴事実
検察の公訴事実の要約。
「Winnyが公衆送信権を侵害していること広く利用されていることを認識・許容しながら、ホームページ等で公開して誰でも入手できる状態にすることで、公衆送信権を侵害した正犯者の犯行を幇助した」


■論点
弁論要旨から引っ張ってみた。

・被告人に幇助犯成立の余地はないこと
・被告人は著作権侵害を助長する行為をしていないこと
・具体的犯行と因果性の欠如
・故意の不存在
・被告人のWinny開発目的
・Winnyは価値中立的なソフトウェアに過ぎないこと
・(おまけ)2ちゃんねるの書き込みが証拠たりえるか


■判決
判決要旨から。

×被告人に幇助犯成立の余地はないこと
×被告人は著作権侵害を助長する行為をしていないこと
・幇助行為として違法性を有するかどうかは、社会における利用状況や認識、提供する際の主観的態様による。
・Winnyが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら開発を続けた。
 捜査段階における供述や姉とのメールの内容、公開状況が判断の根拠。
・正犯者がWinnyを匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機とし、公衆送信権侵害に及んだことは認められる。

×具体的犯行と因果性の欠如
・Winnyの機能として匿名性があることで精神的にも著作権侵害を容易ならしめた客観的側面はある。

×故意の不存在
・社会に生じる弊害を十分知りながら、自己の欲するまま行為に及んでいる。

△被告人のWinny開発目的
・違法ファイルのやりとりに使われていることを知りながら開発・公開している。
・Winnyの開発が公然と行えることでもないとの意識もあった。
被告は著作権侵害の状態をことさら生じさせることは企図していない
・自己のプログラマとしての新しい技術の開発という目的もあった
・被告は著作権侵害によって何らかの経済的利益を得ていない

○Winnyは価値中立的なソフトウェアに過ぎないこと
・Winnyを技術としてみると、さまざまな分野に応用可能で有意義。技術自体は価値中立的。

よって、量刑は罰金刑が適当である。


△(おまけ)2ちゃんねるの書き込みが証拠たりえるか
・弁護側も提出している発言に関しては採用
・47氏のトリップに関しては判決に言及なし
 検察が提出した2ちゃんねるの証拠は退けられた可能性が高い。ま、判決全文を読まないと判断できないけど。


■判決の感想
「自分の作ったソフトが広く社会で犯罪行為に使われていると知りながら、防止行為をしなかった」のがまずいというのが裁判官の結論。
Winnyがなかったら、公衆送信権侵害の行為をした人たちもやらなかったでしょうと。
ただし、自身が金銭的な利益を得てないし、プログラマとして新しい技術を開発したいという純粋な動機「も」あったから、懲役刑は勘弁して罰金刑とする。

妥当な判決じゃないでしょうか。 犯罪行為に使われてると知りながら、バージョンアップを繰り返しているわけで、幇助意思がなかったとは考えにくい。
一方で、技術的な興味や、自己顕示欲のために作っており、自身は公衆送信権を侵害していない。だから罪を減じてあげようと。
おまけに「被告は著作権侵害の状態をことさら生じさせることは企図していない」とまで言ってくれている。この点に関しては弁護側の主張を採用し、警察のとった調書を否定している。
個人的にはこの判決で満足して罰金を払うのが金子氏にとってベストな選択と感じるんだけど…即日控訴なんだよな。


■争点になった「幇助」
今回の裁判はWinnyの開発が公衆送信権侵害の幇助にあたるかが争点でした。この点に関して弁護側の主張は退けられてます。

「幇助」の成立要件はこんな感じ。
・正犯の実行行為を容易にするという客観的な幇助行為の存在
・正犯の実行行為を容易にするという主観的な意思(幇助意思がある)

(1)客観的な幇助行為
正犯者がWinnyを匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを犯罪の一つの契機としている点から、裁判官は客観的な幇助行為があったと判断している。
また、Winnyが「データが流出すれば回収なども著しく困難」であり、「利用者が相当多数いること」から寄与の程度も少なくないとしている。
ま、これはしょうがないでしょう。

(2)幇助意思の有無
問題はこちら。
金子氏は違法なファイルのやりとりをしないように注意書きをしていた、つまり幇助意思がなかったと弁護側は主張している。
これに対し裁判官は「著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容した」「公然と行えることでもないとの意識も有していた」という2点から幇助意思があったと判断している。
また、Winny2はBBS機能が中心でファイル共有機能はメインではなかったという弁護側の主張に対しても、ファイル共有機能をWinny2でも削除していないことから幇助意思があったと判断している。
個人的には幇助意思があったと納得できます。


■判決がソフトウエア業界に与える影響の考察
今回の判決が与える影響はこんな感じかな。

・広く犯罪行為に使用されるソフトを作成すると、幇助として罰せられる可能性がある
・違法に使用されている実情を把握しながら対策しない行為は、幇助として罰せられる可能性がある
 注意書きがあったとしても、実情が黙認であれば罰せられる

犯罪行為を助長する意思を持ち、犯罪行為を助長するソフトウエアを開発した開発者が罰せられるというのは理解できる。
一部で言われている、ソフトウエア開発者を萎縮させる効果のある判決とは思えない。裁判官もその辺を意識して、「価値中立的な技術の提供が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でない」と書いてる。

今回の判決で、開発者の意思が大切なことがよく分かったのが自分の最大の収穫。


FLMASKのわいせつ画像裁判といい、インターネットに関する裁判で幇助が出てくるのは2件目。急速なインターネットの発展に法整備が追いついてない現状に対し、どうにかしなきゃいけない現実を映し出してるんだろうな。

人気blogランキング



posted by まる at 12:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会人 Chips | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月02日

定数のチェックはちゃんとやりましょう

一ヶ月更新の予定だったのに、10月、11月は書けずに過ぎてしまった。
申し訳ないので、今月は3本をノルマにしときます。

最初は軽く定数のチェックをサボったおかげでヒドイ目にあった話。

ずっと快調に動いていたプログラムが3月に入って、突如動作を停止。
顧客「3月に入って動かなくなるって、まさか月処理を間違えてないですよね」
自分「そんなことはないですよ。これはプログラムの〜というバグだと思いますよ。」

その場を切り抜けてから、モジュールを調べてみたら、
3月を判定すべきところに「may」と書いてありましたとさ。

アルゴリズムは問題なくても、定数まで含めてちゃんとテストしなかったおかげで、顧客先でのしょうもないバグ。
テストは定数値のチェックまでやりましょう。

人気blogランキング

posted by まる at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | プログラマ Chips | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。